いちばんぼし
2006-08-24


すっかり、涼しくなったね。
 
 僕の家は、今の職場から、その気になれば歩いて帰れる距離にあるんだ。このところ暑くて歩くのをずっとさぼっていたのだけれど、涼しい風にそそのかされて、久しぶりに歩いて帰ることにしたよ。
 
 その途中にね。
 淀川っていうおっきな川を東から西に渡るのだけれども。
 その橋から見える、お日様が沈んだばかりの景色がね、とってもきれいで。
 多分六甲山だと思うのだけれども、ちょっと遠くに山があってね、昨日降った夕立のせいだと思うけれど、その稜線がくっきりしていていい気分。その山に向かってね、阪神高速のだいだい色のランプが列をなして曲がりくねってく。
 空を見るとね、稜線近くの、陽が落ちてくすみかけた肌色から、上を見上げるとまだ鮮やかな蒼まで、それはきれいなグラデーションでね。そのまま視線を移動して、後ろを振り返ると梅田の街のくすんだ黒い空になるんだけどね。
 視線を戻して、お山の空にね、なんか不思議な、とってもきれいな光を見たんだ。
 たぶんお日様は、まだ地平線には隠れていないで、お山の裏側あたりにいるんだと思うんだけどね。その、裏側にいるであろうお日様を中心として、放射線状に、ちょっとだけ鮮やかなだいだい色の光がね、広がってるんだ。
 肌色から蒼へのグラデーションは、同心円状に拡がるよね。その中に、二つか三つ、放射線状に拡がる光の筋があってね。
 よく、雲のすきまから漏れる光が筋になることがあるけどね、稜線から上に向かって拡がる筋って、なんか不思議で、ちょっと得した気分。
 
 川を渡り終えてね、家が近くなってきたときに、もうすっかり紅色をなくした空をもう一回見上げたら。
 今度は青から蒼へのグラデーションの中にね、キラキラ光る星を一つ、見つけたよ。
 
 いちばんぼし、みつけた。
 
 ただ、それだけのはなし。
[ただ、それだけの風景]

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