フェルマーの最終定理
2007-09-30


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読書の秋、だからって訳ではないのだけれども。
 なんかしっかりした、読み応えのある本を読みたくなってね。久しぶりにいった「リアル」の本屋さんで手に取った本、読んでみたよ。
 
 フェルマーの最終定理、っていう本なのだけれども。
 ピタゴラスの定理、って有名だよね。直角三角形の斜辺の長さの二乗は、他の二辺の長さの二乗の和に等しい、っていうやつ。
 数式で表すと、
  x2+y2=z2
 これがどんな直角三角形にでも当てはまる、ってことは、この式を満たすx,y,zの組み合わせは無数にある、っていう定理。
 定理っていうのは、厳密に証明された真実、っていう数学界の言葉らしいのだけどね。
 
 フェルマーの定理っていうのは、これとにていて。ピタゴラスの定理で二乗だと答えが無数、ではなくて無限にあるのだけれど。
 でも。
 二乗ではなくて、三乗とか四乗、それ以上になったら、これを満たす整数解は存在しないよ。っていうのが、フェルマーの定理。
 数式で表すと、
  xn+yn=zn  ただしnは2よりも大きい
 このとき、x,y,zを満たす整数解は存在しない。
 
 ただ、これだけ。
 僕は理系の人間なのだけれど、数学っていったら高校の時の数学Iとカクリツトウケイくらいまでで、ビブンセキブンになるとお手上げ、っていうくらいの人なのだけれど。
 それでも、このなぞなぞがいっている意味は分かるよ。それくらい、簡単な言葉で作られた、問題。
 
 もちろん、簡単な言葉で作られているから、答えも簡単っていうわけではなくってね。
 この問題が作られてから、三百年以上、偉い数学者達が雁首揃えて、歯が立たなかった。
 これが正しい、っていう証明も、間違っている、なぜなら、、、っていう反証もできないまま三百年。しかも、問題を作った当のフェルマーは、
「俺は証明できてるけど、ちょっとこの本には落書きスペースが少ないから書ききれないや」
 っていう癪にさわるメモを残していて。
 それがまた数学者を刺激して。でも三百年、誰も証明できなかった。
 
 この本は、その問題を解こうとしたたくさんの数学者と、そして、その問題をついに解いた、ワイルズっていう数学者の、物語。
 
 僕は生物学を、その中でも分子生物学っていうのを勉強した人間だからね。生物学には、ワトソン/クリックと、ロザリンド・フランクリン達が繰り広げた、有名なDNA構造の発見競争っていうのがあって。そういうのがあるから、科学っていうのはどろどろしているものだ、っていうのは知っているのだけれども。
 でも、ひとつの問題の解決に、三百年もかかって。言い換えれば、ひとつの問題が三百年も魅力的であり続けて、っていうのは知らないよね。
 例えば、タイムマシンを作る、っていうのは、有史以来の人類の夢だと思うけれど、フェルマーの定理はそういうのとはちがって。三百年前にフェルマーが解いたといった、その問題を、三百年間、誰も解けなかった、ってことだからね。
 まあ、ホントにフェルマーが解いていたのかどうかは議論のあるとこらしいけれど。
 
 こんな問題、解けやしないよ、とか。
 こんな問題、解けたってなんの役にも立ちはしないよ、とか。
 そういって、最近ではアマチュアのものになりつつあったこの問題に、子供の頃からこの問題に焦がれて数学者になった一人の天才が、八年間、他のことはなんにもしないでこのことだけ考え続けて、やっと証明に成功した。
 と思ったら、そこにはほんのちょっとだけ、齟齬があって。
 その齟齬は、埋めようと思ったら他のところに穴があく、とても悪質なもので。
 世界が蜂の巣をつついたような騒ぎになっているなか、胃に穴があくような期間を経て、一年後、やっとその齟齬を解消する理論を発見して。
 そして、今度こそ、証明完結。
 

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[ただ、それだけの物語]

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