銛で鯨を突いていた、野蛮な民族の末裔。
クローン豚からの臓器移植で、苟且の健康を買う人々。
立ち入ってはいけない、老朽化した設備の門に立つ守衛。
身近にある死と、遙かに遠い誕生。
廃炉の街に淡々と流れる、時間。物語。
人間が創り出した過酷な世界。それを受け入れて暮らす人々。あるいはそれを克服するために働く人々。
そういうものを描くのって、もともと、エスエフっていう分野の役割だったよね。将来的に起こる可能性を、科学的嘘で修飾しながらシミュレートする。突飛な、いつか、どこかの物語じゃなくって、現代社会のちょっとだけ異次元のパラレルワールド。
小松左京の、「日本沈没」のような、そういう災害シミュレーション。
今こそ、そういう物語の出番だと思うのだけれども。
でも、僕のアンテナが、エスエフ畑から離れちゃったからかどうか、そういう物語がエスエフからは出てきてないなあ。って思っていたら。
そのものど真ん中の物語、岩井俊二が出したんだね。
岩井俊二が、エスエフの人なのかは微妙だけれど。
正面から、このタイミングで発表した事に、まず、敬意。
岩井俊二の小説は、自身の映画のノヴェライズっていう性格がどうしてもつきまとっていて、小説としてはどうなんだろう、って思ってたんだよね。。だから手に取らないようにしていたのだけれども。
セコメントをする