大宮市民会館いっぱいに、吹奏楽の奏でる音楽がひびきわたっていた。
〓 高く、低く、強く、弱く、楽しく、寂しく、楽器は唄っていた。
〓 おれらの最後の演奏会だった。
〓 一部クラッシック、二部ポップスと続いてきたこの演奏会も、いよいよ、二部最後の曲、デューク・エリントン・メドレー、十分間の大曲だ。〓 その曲も、おわった。
〓 最後の曲に、大きな拍手が寄せられた。
〓 いよいよ最後の演奏会もトリだ。この瞬間のために、いままで死ぬほどがんばってきたんだ。いろいろな思いが胸をよこぎった。思わずジンとしてしまう。
〓 泣いちゃだめだ。ポップスで終る演奏会、涙は似合わない。
〓 大きな拍手が、リズムを作り、大きな二拍子になっていった。一人の人からはじまった二拍子が、会場いっぱいの、全員に伝染していく。おれのいちばん好きな瞬間だ。
〓 この気分も、もう最後かと思うと、ツンとこみあげるものがある。でも、やっぱりだめだ。人前でなくなんて、そんなダサイこと、だれがやるもんか。
〓 二拍子のリズムが、演奏を誘うように次第にはやくなる。アンコール、アンコール、と声が聞こえてきそうだ。
〓 ずん、ずん。
〓 しだいに熱を帯びていく拍手のなか、曲は、しかしゆっくりとしたシンセサイザーの低音で始まった。〓
お客さんが、何ごとかと手拍子をやめる。しめしめ、こっちの思惑どうりだ。みんな、なにが始まるのか見当もつかないで。とまどっているぞ。
〓 アンコール曲は、〓〓
愛の兆し。
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