がんばれブラバン その1
1986-04-11


 がんばれブラバン! 
       〜心の音楽(うた)をブッとばせ〜 


 一九八六年四月十一日・・・

 大宮市民会館いっぱいに、吹奏楽の奏でる音楽がひびきわたっていた。

〓 高く、低く、強く、弱く、楽しく、寂しく、楽器は唄っていた。

〓 おれらの最後の演奏会だった。

〓 一部クラッシック、二部ポップスと続いてきたこの演奏会も、いよいよ、二部最後の曲、デューク・エリントン・メドレー、十分間の大曲だ。〓 その曲も、おわった。

〓 最後の曲に、大きな拍手が寄せられた。

〓 いよいよ最後の演奏会もトリだ。この瞬間のために、いままで死ぬほどがんばってきたんだ。いろいろな思いが胸をよこぎった。思わずジンとしてしまう。

〓 泣いちゃだめだ。ポップスで終る演奏会、涙は似合わない。

〓 大きな拍手が、リズムを作り、大きな二拍子になっていった。一人の人からはじまった二拍子が、会場いっぱいの、全員に伝染していく。おれのいちばん好きな瞬間だ。

〓 この気分も、もう最後かと思うと、ツンとこみあげるものがある。でも、やっぱりだめだ。人前でなくなんて、そんなダサイこと、だれがやるもんか。

〓 二拍子のリズムが、演奏を誘うように次第にはやくなる。アンコール、アンコール、と声が聞こえてきそうだ。

〓 ずん、ずん。

〓 しだいに熱を帯びていく拍手のなか、曲は、しかしゆっくりとしたシンセサイザーの低音で始まった。〓

 お客さんが、何ごとかと手拍子をやめる。しめしめ、こっちの思惑どうりだ。みんな、なにが始まるのか見当もつかないで。とまどっているぞ。

〓 アンコール曲は、〓〓


 OMENS OF LOVE 

 愛の兆し。



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