ウィントン・マルサリスは、本当にジャズを殺したのか? 中山康樹の遺作
2015-12-12


 このごろ、読むジャズに触れる機会が多くってね。

 大抵は、マイルスがらみなのだけれど。

 まあ、それはあとでゆっくり書きたいな、と思っているのだけれど、マイルスから、「マイルスを読め」の中山康樹さんにたどり着いて。今年の初めになくなった中山さんの、最後の本が、ウイントン・マルサリスに関する本だったから、読んでみたよ。

 ウィントン・マルサリスは、本当にジャズを殺したのか?

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 まあ、僕には、本当にジャズが殺されているのか、死んでいるのか、本当に死んでいるとして、それがウィントンの前だったのかあとだったのか、よく分からないのだけれどもね。

 ウィントンは、同世代に生きる、影響力の大きなミュージシャンであり、僕の中でも、一般的にも毀誉褒貶の激しいヒトであって。しかも村上春樹に「ウィントンの音楽はなんて退屈なんだろう」なんて書かれてしまって、メディアにすっかり嫌われている印象があってね。

 でも、大学時代に、出たがりウィントンの圧倒的なライブを目にすることが出来た僕は、新譜を見つけたり、来日公演を見つけたりするとせっせと買ったり足を運んだりするくらいのファンではあってね。

 ジャズを殺したのがウィントンだなんて言うのなら、あの世の中山さんに文句のひとつもたれてやろう、と読んでみたんだよ。

 もちろん、中山さんは、好きな物を魅力的に書くヒトだから、こてんぱんにはなっていないだろう、とは思っていたのだけれどもね。

 ウィントン・マルサリスはね、僕がジャズに興味を持った1980年代に、すごい勢いで台頭してきた、ジャズのラッパ吹きで。

 僕も金管楽器を吹いていたから、いや、楽器を演奏したことのない人にも多分ヒト耳で分かる、圧倒的なテクニックを、最初から持ってたんだよね。そう、マイルス・デイビスなんて相手にならないほどの、圧倒的なテクニック。

 ただし、水掻きのついた、いかにも肉厚のモネ製のラッパから出てくる音は、どっちかって言うとクラシックの音で。マイクの前で仁王立ちになって、足の位置を動かさずにクールに圧倒的なソロを吹く様は、ハイトーンに逃げたり、音を外したりという、ジャズを聴き始めの高校生にとっての「分かりやすい」熱さがないから、ちょっと近寄りがたかったんだよね。

 その頃のぼくらのアイドルは、火を噴くトランペット、クリフォード・ブラウンだったからね。

 大学のジャズ研に入っても、まあみんなの印象もそんな感じで。その頃聴いてたのは、ハンコックや、メッセンジャーズのやつだったかな。高校の時には、ブラックコーズとか聴いてるやつもいたな。


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[ただ、それだけの音楽]

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